情シス業務を効率化する方法とは?最適なツールや選定ポイントを解説
組織で導入・活用されているITシステムの保守運用や、新たなシステムの導入立案、保有している各種デバイスの資産管理、トラブル対応など、情報システム部門は日々さまざまな業務に追われています。
そこで重要になってくるのが「業務の効率化」です。増え続ける情シス業務を遂行するためには、人がやるべき作業とツールで代行すべき作業を選り分け、効率的にタスクをさばいていく必要があります。
本記事では、情報システム部門の業務効率化に役立つさまざまな手段をご紹介します。多忙を極める情シス担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
・情シスの役割を整理
・情シス業務をとりまく課題
・情シス業務の効率化におすすめ!代表的なツールを解説
・ツール導入の注意点
・情シス業務効率化のために、SS1の導入をご検討ください
・まとめ:情シス業務の効率化で大切なこととは
情シス(情報システム部門)とは?
情報システム部門とは、組織で利用するシステムの企画・開発・運用に関わる部門を指します。
具体的な業務内容は組織によって異なりますが、社内システムの開発・運用やIT資産管理、社内ヘルプデスク、セキュリティ対応などを担っていることが多いようです。
情シスの役割を整理
情報システム部門の役割としては、「ITによる利益創出」「ITによる業務効率化」「既存システムの保守・運用」の3つが挙げられます。
ITによる利益創出 | 事業戦略に則ったITシステムの企画・立案・導入をおこなうことで、積極的な利益創出に貢献する |
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ITによる業務効率化 | 既存の業務プロセスをIT技術によって簡略化し、リソースやコストの削減に貢献する |
既存システムの保守、IT機器の運用・管理 | 基幹システムをはじめとした社内システムのメンテナンス、トラブル対応、IT資産管理をおこない、事業の安定稼働に貢献する |
上記はあくまでも本来の役割の一部であり、実際の業務内容は非常に多岐にわたります。 また組織の規模によっては、役割ごとに専任担当を据えていることもあれば、すべての役割を一人が担うケース(=ひとり情シス)もあるようです。
情シス業務をとりまく課題
情報システム部門は、現在さまざまな課題を抱えています。
IT人材の不足
もっとも大きな課題は「IT人材の不足」でしょう。
2016年時点の調査では、2019年をピークにIT人材は減少に向かうと予想されていました。これには若年層の人口減少が関わっており、相対的にIT人材の高齢化が進展するとも考えられているようです。
一方、IT人材の需要は逆に年々高まることが想定されるため、将来的には40~80万人規模で人材不足がおこると懸念されています。
また同時に、セキュリティに関する人材不足も深刻です。
アメリカのNPO団体「ISC2(International Information Systems Security Certification Consortium)」がおこなった2023年の調査によると、日本におけるサイバーセキュリティ人材の大幅な不足が示唆されています。
セキュリティ人材自体は前年から23.8%増加したものの、人材需要が33%増加したことによって、約11万人もの人材不足が発生しているというのです。この日本のセキュリティ人材の需給ギャップは、調査対象国のなかでもっとも高い数値を記録しており、諸外国と比べて人材不足がいかに深刻かがうかがい知れます。
ノンコア業務の負担増
人材不足に追い打ちをかけるように、情報システム部門のノンコア業務も増加傾向にあります。
ノンコア業務とは、それ自体が利益を生み出すわけではない業務全体を意味します。具体的な業務定義は組織によって多少変化しますが、概ね以下のような作業を指す場合が多いようです。
・PCキッティング
・社内ヘルプデスク業務
ほか
かつて情報システム部門の役割が社内システム開発・運用を主としていた時代には、情シス業務すべてを組織のノンコア業務とするケースもありました。
しかし、今ではITシステムの利活用は事業戦略の要といっても過言ではありません。IT戦略の企画・立案は組織の売り上げに直結するものとみなされ、情シス業務はコア業務として認識されはじめています。
しかしITシステムの導入が進むにつれて、それらの保守・運用業務は増大し、トラブルの数も増加します。結果として、コア業務に集中すべき時間が日々のトラブル対応に奪われてしまうのです。
この課題は、多くの情報システム担当者にとって悩みの種となっています。
テレワーク普及によるヘルプデスク業務の増大
増大するノンコア業務として近年よく聞かれる例には、テレワーク端末に対するトラブル対応があります。
新型コロナウイルスの流行によって主流化したテレワークですが、VPN接続やリモートデスクトップ接続など、これまで活用の機会が少なかったソリューションを用いて実現した組織も多いでしょう。
これらの新しい社内インフラの運用に際し、セキュリティ要件の確認や初期トラブルの対応などに多大なリソースを費やしたという声はよく聞かれるところです。
特にテレワーク端末のヘルプデスク対応については、情報システム部門の担当者が直接端末を確認できず、かつ各利用者の自宅のネットワーク状況が不透明であることなどから、トラブル原因の究明が非常に難しくなっています。
よって一つひとつの対応時間が伸びてしまい、以前よりもノンコア業務が増えたという組織も多くなっているようです。
セキュリティ対策の不足
上述のテレワーク普及などを含め、組織を取り巻くIT環境は日々変化を続けています。
例えば組織全体の業務効率化のために、チャットツールやクラウドストレージなどの外部サービスを契約する組織が増えています。
しかしそういったツールには、当然セキュリティリスクがつきものです。
しかし組織としてどんなツールを導入していて、それぞれ誰が利用しているのか・それらのツールでやりとりされているデータはどのようなものかを特定できていないというケースも多く存在します。
また、利用者が勝手にITツールを導入してしまう「シャドーIT」も課題になっています。そもそも組織として認識していないツールが勝手に使われていた場合、そこに対するセキュリティ対策を検討する以前の問題でしょう。
このように、組織に導入されるITシステムが複雑になっていくにつれて、検討すべきセキュリティ対策も当然多くなっていきます。
しかし、そもそも組織の現状を把握すること自体に課題を持っている情報システム担当者も少なくありません。その場合、十全な対策を検討・実施するところまで手が回っていないというのが現状のようです。
2025年の崖
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」で提唱された言葉です。
このレポートでは、「DX」を推進するにあたって、レガシーシステムの存在やデータ活用環境の未整備といった課題が指摘されています。そしてこれらの課題が解決できなかった場合、2025年以降に多額の経済損失が生じる可能性があると試算しており、それを「2025年の崖」と呼んでいるのです。
人材不足・ノンコア業務過多に加えて、情シス部門はこういった経営課題にも着手する必要があります。
情シス業務の効率化におすすめ!代表的なツールを解説
この通り、情報システム部門の業務には多くの課題が存在します。
これらの課題を解決するためには、一つひとつの業務を効率的にこなす方法を検討することが肝要です。
具体的には、「人間にしかできないこと」と「システムで自動化できること」にタスクを選別し、システムに任せられる業務は積極的に人の手から手放していくことが挙げられます。
従来は情シス業務を減らすための手段として、アウトソーシング(外部委託)が主流でした。しかし昨今はさまざまなツールも登場しており、業務効率化の手段も多様化しています。
ここからは、業務効率化で活用できる代表的なツールをご紹介します。
チャットボット
主に社内ヘルプデスク業務を効率化する方法として有効なのが「チャットボット」です。
チャットボットとは、ユーザーからの質問や問いかけに対して、自動的に返信をしてくれるプログラムのことです。このチャットボットを従業員から寄せられる問い合わせに対して活用することで、ヘルプデスク業務を削減できます。
よくあるトラブルの対処法などをマニュアル化し、その内容をチャットボットに取り込めば、全体の問い合わせ数を減らすことが可能です。
また、チャットボットは複数人に対して同時に対応できるため、短時間でより多くのトラブル処理をこなせます。
ヘルプデスク業務で一日が終わってしまう...と悩んでいるのであれば、一度は検討する価値のあるツールでしょう。
RPAツール
RPAとは、Robotic Process Automationの略語です。決まった型のあるルーティン業務をロボットによって肩代わりさせられるもので、コピー&ペーストやデータ入力といった単純作業が得意分野になります。
入力されたデータに対してある程度柔軟な対応が可能なチャットボットと違い、RPAツールでは作業プロセスが完全に固定される必要があります。
よって、定型業務となっているシステム設定やデータ集計、レポーティング等で効果を発揮するでしょう。
RPAツールは良くも悪くも設定に忠実であるため、インプットした作業通りのことしかおこないません。
作業フローに変更があった場合は都度調整する必要がありますが、フローさえ確立されていればミスが大幅に削減されるというメリットがあります。
人的ミスを減らしたいルーティン業務の効率化にはぴったりのツールなのです。
クラウドサービス
具体的なツールではありませんが、社内システムにオンプレミス型のものが残存しているようであれば、積極的にクラウド化していくことも業務効率化に効果的です。
オンプレミス型システムは、どうしても組織内の情報システム部門で保守・運用をおこなう必要があります。しかしクラウドサービスであれば、サービス提供ベンダーがその作業を肩代わりしてくれるため、ノンコア業務の削減につなげられます。
よく聞かれるサービス提供形態にSaaSがありますが、利用しているシステムによってはそのまま移行できないケースもあるかもしれません。その場合は、IaaSやPaaSなど別の形態も検討するとよいでしょう。
SaaS:Software as a Service | ソフトウェアをクラウドサービスとして提供してもらう型 |
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IaaS:Infrastructure as a Service | 基盤のみをクラウドサービスとして提供してもらう型 |
PaaS:Platform as a Service | ミドルウェアをクラウドサービスとして提供してもらう型 |
クラウドサービスのラインナップや提供形態は、年々進化を遂げています。組織内システムのレガシー化に対する対応策としても有効なため、積極的に検討したい手法の一つです。
IT資産管理ツール
セキュリティ対策に関連したノンコア業務を効率化するツールとしては、「IT資産管理ツール」が挙げられます。
組織内のIT資産の台帳管理・更新は、セキュリティ上重要な要素ではあるものの、手作業でおこなうとなると多大な労力を要するものです。
IT資産管理ツールを活用すれば、IT台帳の作成のみならず、OS更新管理やログ取得・ソフトウェア監査対応といったあらゆる関連業務を自動化できるようになります。
ツール導入の注意点
情シス業務効率化に役立つツールについてご紹介しましたが、これらの導入にはいくつかの注意点があります。
注意点① ツール導入前には下準備が必須
一つ目のポイントは、各ツールを導入する前にマニュアル整備や業務の標準化というプロセスが必須であるという点です。
上述したツール類はあくまでも、活用できる情報がきちんと整備された状態で存在していること・作業フローがシステムへ落とし込めるほど確立していることが前提となっています。
社内ヘルプデスクでチャットボットを活用する場合は、よくあるトラブルとその対処法を集約したマニュアルを作成しておかなければなりません。
RPAツールを活用する際も、作業担当者の肌感覚や経験によるさじ加減などを排除した、脱属人化された作業フローを用意する必要があります。
「その下準備をする暇がないのに...」と思われる方もいるかもしれませんが、残念ながらツールをただ導入するだけでは業務効率化にはつながらないのです。
むしろこれをよい機会ととらえ、現在おこなっている各業務の棚卸や整理をおこなってからツール導入をおこないましょう。
注意点② 製品の拡張性・柔軟性をチェックする
ツールを検討する際には、中長期でのニーズを満たせるものかを見極めることも重要です。
特にRPAツールやIT資産管理ツールには、情報システム部門以外の部門の業務で役立つ機能が搭載されています。直近の課題解決ニーズを満たすことにとらわれず、中長期的な目線で、組織全体として活用できないかを模索するとよいでしょう。
例えば、RPAツールはSFAなど他ツールとの連携が得意です。場合によっては営業部門や総務・経理といったバックオフィス部門の業務効率化にも役立てられます。
IT資産管理ツールは、PCの稼働状況ログからテレワーク中の業務実態を把握することにも活用できます。これは総務部門などが担当している「働き方改革」にも転用できる機能です。
各ツールに求める機能については、綿密な要件定義のもと検討する必要があります。
ツール導入ではどうしても価格などに目が行きがちですが、将来的な拡張性も見据えて、本当の意味でコストパフォーマンスに優れた製品を選定できるように留意しましょう。
情シス業務効率化のために、SS1の導入をご検討ください
情シス業務を効率化するための手段としてIT資産管理ツールを導入される際は、ぜひ弊社製品のSS1の活用をご検討ください。
SS1には、情シス業務に役立つさまざまな機能が多数搭載されています。
IT資産管理台帳の自動作成
IT資産管理ツールSS1を導入いただくと、組織内に存在しているIT資産の情報を自動で収集し、台帳化することが可能になります。
PCだけでなく、サーバーやルーターなどあらゆるIT機器を登録可能です。また、各PCにインストールされたソフトウェア情報も自動で取得するため、組織として許可していないソフトウェアの利用を確認したり、強制的にアンインストールしたりもできます。
OS更新管理・ログ監査の効率化
IT資産管理ツールSS1では、OSの更新管理やログ監査といった作業も効率化できます。
ツールを使った管理方法などは下記の記事でも詳しくご紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。
ちなみに、IT資産管理ツールを使ったログ取得の利点として「ユーザーによるITシステムの利用実態を把握できる」というものもあります。誰が・どのツールを使って・何のファイルを操作したかを監視できるため、情報漏洩対策の一環として効果的です。
例えばSS1では、クラウドストレージへのファイルアップロード・ダウンロードを監視する機能を搭載しています。
こうした手作業で収集することが難しい情報も、ツールを活用すれば簡単に確認できるようになります。業務効率化をおこないつつセキュリティ対策を強化したい場合は、ぜひ活用をご検討ください。
社内ヘルプデスク業務に役立つインシデント管理機能
さらに、ヘルプデスク業務を効率化したい場合にもSS1はご活用いただけます。
端末の所在地を問わずリモートで接続できる「リモートコントロール機能」や、過去におこったトラブル履歴を各端末に紐づけて記録できる「インシデント管理」機能などを利用することで、トラブル対応の効率化やナレッジ化に生かせるようになっています。
また、トラブル対応にかかる時間を削減できる機能として、端末内で生じた構成情報の変化をタイムスタンプごとに比較できる「差異表示」機能も大変ご好評いただいています。
これは、構成情報の差異を比較したい日時を選択することで、ソフトウェアの追加/削除といった指定期間内に端末でおこった変化をひと目で把握できるものです。
ヘルプデスク対応で、「何もしていないのに壊れてしまった。とにかく修理してくれ」という問い合わせがきてしまい困った経験がある方も多いのはないでしょうか。
この機能ではユーザーへヒアリングをおこなうことなく端末の操作状況を把握できるため、トラブル原因の切り分け作業を効率化できるようになります。
SS1にはそのほかにも多数の機能がございます。各機能の一覧や詳細については、下記のWebページをご参照ください。
まとめ:情シス業務の効率化で大切なこととは
ここまで、情シス部門を取り巻く課題や、業務効率化に役立つツールをご紹介しました。
人材不足・業務過多の情シス部門においては、ツールを活用したノンコア業務の自動化・効率化が急務となります。しかし、中長期的な業務効率化を目指すなら、綿密な下準備をおこなうことも重要です。
下準備の一環として、従業員のITリテラシーを向上させることが挙げられます。なぜならヘルプデスク業務の肥大化やセキュリティリスクの増大には、従業員のITリテラシー不足も大きな要因を占めているからです。
情シス業務の整理やツール導入とあわせて、従業員のITリテラシーを向上させるための適切な研修・教育の提供も検討してみてください。
IT人材のリソースを有効活用することは、IT戦略が重視される昨今において立派な経営戦略の一つといえるでしょう。
情シス業務の効率化にお悩みであれば、自社にとってのノンコア業務の効率化について、一度考えてみてはいかがでしょうか。

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