EDRとEPPの違いとは?役割を比較し必要性や選び方を解説

EDRとEPPは、どちらも組織のエンドポイントを保護する重要なセキュリティ対策ですが、その役割には明確な違いがあります。
EPP(Endpoint Protection Platform)とは、エンドポイントをマルウェア感染などの脅威から保護するための統合的なプラットフォームです。主な機能は、既知のマルウェアがもつ特徴的なデータとファイルを照合してブロックするパターンマッチングであり、侵入を未然に防ぐ事前対策の役割を担います。
一方でEDR(Endpoint Detection and Response)は、脅威の侵入を前提とし、侵入後の迅速な検知と対応を目的としたツールです。ログを常時監視して不審な挙動を検知するため、事後対策として被害の拡大を食い止める役割を果たします。
本記事では、EPP、EDR両者の基本的な役割を比較し、なぜ今の時代に両方が必要なのかを解説します。
・なぜ今EDRが必要?EPPだけでは防ぎきれないサイバー攻撃の現状
・EDRとEPPを組み合わせる多層防御のメリット
・自組織に最適な製品は?EDR・EPPの選び方
・EDR・EPPと関連セキュリティ用語の関係性を整理
・まとめ
・EDR×IT資産管理の事例:日清紡ホールディングス株式会社 様
EDRとEPPの4つの違いとは

EDRとEPPは、防御をおこなうタイミングや検知の対象となる脅威など、さまざまな点で違いがあることがわかります。これらの特性を正しく理解することは、自組織のセキュリティ課題に対して、どのような対策が最適かを判断するうえで欠かせません。ここでは、両者の本質的な違いを比較し、それぞれの役割を明確にしていきます。
防御のタイミング
EPPとEDRにおける最も大きな違いは、サイバー攻撃に対して防御策を講じるタイミングです。
EPPの役割は、マルウェアなどがエンドポイントに侵入するのを防ぐ「侵入前」の対策、いわゆる水際対策です。
これに対し、EDRはEPPによる防御をすり抜けてエンドポイント内部に侵入してしまった脅威を対象とする「侵入後」の対策に重点を置いています。
EPPが門番として侵入者を防ぐのに対し、EDRは内部に侵入した脅威を発見し対処する警備員に例えられます。
組織を守るためには、どちらか一方(EPP or EDR)に頼るのではなく、状況に応じた適切なタイミングで対策を機能させることが重要です。
検知対象
EPPは、シグネチャ情報をもとに脅威を特定するパターンマッチングを主な検知手法とするため、過去に確認されている「既知の脅威」の検出を得意としています。
一方、EDRはエンドポイントの動作ログを常時監視し、通常とは異なる振る舞いを検知する技術を用いるため、シグネチャが存在しない「未知の脅威」やゼロデイ攻撃、ファイルレス攻撃などの検知に優位性があります。
近年のEPP製品のなかにも、AIなどを活用して未知の脅威に対応できるものが登場していますが、侵入後の活動を詳細に追跡する能力はEDRが専門です。
両方の製品を組み合わせることで、既知と未知、双方の脅威に備える体制を構築できます。
運用に必要なスキル
EPPは、製品が自動で脅威を検知・ブロックしてくれることが多く、定義ファイルを最新に保つといった基本的な管理で運用できるため、比較的容易に扱えます。
アラートが出た場合も、それが既知の脅威であれば対処は明確です。
対照的に、EDRは検知したアラートが本当に危険なものかを判断し、その後の調査や対応方針を決定するために、サイバーセキュリティに関する高度な専門知識とスキルが不可欠です。
主な機能
EPPがもつ主要な機能は、既知のマルウェアのシグネチャとファイルを照合する「パターンマッチング」です。
これに加え、不正な通信を遮断するパーソナルファイアウォールや、危険なWebサイトへのアクセスをブロックするWebフィルタリングといった機能も統合されています。
対するEDRの核となる機能は、エンドポイントのログを常時監視し、平時の状態とは異なる怪しい動きを見つけだす「振る舞い検知」です。
さらに、検知した脅威の侵入経路や影響範囲を特定するための分析機能や、感染端末をネットワークから隔離する封じ込め機能なども重要な役割を果たします。
役割の比較まとめ
主要な違いを整理しました。このように、EPPとEDRは防御するフェーズが異なり、互いに補完しあうことでエンドポイントのセキュリティを強固なものにします。
| EPP | EDR | |
|---|---|---|
| 目的 | マルウェアの侵入を未然に防ぐための「予防」ツール | 侵入後の脅威を見つけて対処する「検知・対応」ツール |
| 対応するタイミング(フェーズ) | 攻撃が入ってくる "前" にブロック | 攻撃が侵入した "後" に気づき、封じ込める |
| 主な機能 | ・マルウェアのスキャンとブロック ・シグネチャ(定義ファイル)による既知脅威の対策 ・AI/機械学習を使ったNGAVで未知の脅威にも対応 | ・端末の操作や動作を常時監視 ・ログを収集し、不審な挙動を分析 ・異常検知時にアラート通知 ・感染端末の隔離や封じ込めを支援 |
| 強み | 広範な一般攻撃を入口で止めることが得意 | 巧妙な攻撃や見えにくい侵入に気づく |
| 弱み | 未知の攻撃やファイルレス攻撃を見逃しやすい | ・端末の操作や動作を常時監視 運用に一定の知識・リソースが必要 |
なぜ今EDRが必要?EPPだけでは防ぎきれないサイバー攻撃の現状

従来のEPPによる対策だけでは、近年の高度化・巧妙化したサイバー攻撃を完全に防ぐことが難しくなっており、侵入を前提としたEDRによる対策の重要性が急速に高まっています。その理由として以下の3つが挙げられます。
従来の対策をすり抜ける「ファイルレス攻撃」の増加
ファイルレス攻撃とは、実行ファイルをディスクに作成せず、Windows OS標準のPowerShellなどの正規ツールを悪用してメモリ上だけで不正活動をおこなう手法です。悪意のあるファイル自体が存在しないため、スキャンを基本とする従来のEPPでは検知が困難とされています。
昨今、国内の病院や組織で被害が拡大しているEmotetも、無害なファイルを装い実行ファイル形式をとらずに侵入する特徴をもちます。
このような巧妙な攻撃には、EDRによる振る舞い検知が有効です。
正規プロセスの動作を常時監視し、なかに潜む異常なコマンド実行や不審な通信をあぶり出すことで、ファイルレス攻撃の検知と迅速な対応を実現します。
ゼロデイ攻撃など未知のマルウェアへの対抗策として
ソフトウェアの脆弱性を突き、修正パッチが提供される前の無防備な状態を狙う攻撃がゼロデイ攻撃です。この手法に用いられるマルウェアは、シグネチャが未作成の「未知の脅威」であるため、パターンマッチング方式のEPPでは侵入を防げません。
このような事態への備えとして、侵入後の振る舞いを監視するEDRが力を発揮します。特定のパターンに頼らずとも、システムファイルへの不審なアクセスや外部サーバーとの予期せぬ通信といった異常な挙動を検知できるからです。
リモートワークで変化したエンドポイントのセキュリティ環境
リモートワークの普及にともない、PCやスマートフォンといったエンドポイントが、ファイアウォールなどで保護された組織のネットワークの外で利用される機会が増えました。これにより、個々のエンドポイントが直接インターネットの脅威に晒されるリスクが大幅に増大しています。組織内外の境界線が曖昧になった今、エンドポイント自体を堅牢に保護する「ゼロトラスト」の考え方が重要視されています。
EDRとEPPを組み合わせる多層防御のメリット

EDRとEPPは、一方があればもう一方は不要という関係ではなく、役割の異なる機能をあわせることで真価を発揮します。
この2つのソリューションを併用することで、より強固で抜け漏れの少ない多層防御が実現可能です。
多層防御によるメリットは以下の通りです。
サイバー攻撃による被害を最小限に抑える
入り口対策としてEPPが既知のマルウェアの大部分を水際でブロックし、攻撃の量を大幅に減らします。そして、その防御網をすり抜けて侵入してしまった高度な脅威や未知のマルウェアを、EDRが検知して迅速に対応をおこないます。
この二段構えの体制により、インシデントの発生そのものを抑制しつつ、万が一侵入を許した場合でも、被害が深刻化する前に対処が可能です。結果として、サイバー攻撃による事業への影響や復旧コストを最小限におさえられます。
インシデント発生時に原因を迅速に特定できる
EDRは、エンドポイント上でおこなわれた操作やプロセスの活動、通信履歴などを詳細に記録・分析する機能をもっています。
このため、セキュリティインシデントが発生した際に、攻撃者が「いつ」「どこから」「どのように侵入し」「どのような活動をおこなったか」という一連の流れを正確に追跡することが可能です。
EPPのアラートだけでは分からなかった攻撃の全体像を可視化し、根本的な原因を迅速に特定するのに役立ちます。
原因究明の迅速化は、再発防止策の立案と実施、いわゆるセキュリティ対策の改善サイクルを回すうえで重要であるといえます。
セキュリティ運用の全体的な効率が向上する
EPPとEDRを連携させると、セキュリティ運用の効率化にもつながります。
まず、EPPが大量の既知の脅威を自動的に処理してくれるため、セキュリティ担当者は、より高度な分析や判断が求められる未知の脅威や、EDRが発する重要なアラートへの対応に集中できます。これにより、限られた人的リソースを最も重要な業務に割り当てることが可能になります。
また、EDRが提供する詳細な分析情報は、誤検知の判断やインシデントの優先順位付けにも役立ち、結果としてセキュリティ運用全体の生産性を向上させます。
自組織に最適な製品は?EDR・EPPの選び方

EDRやEPPの導入を検討する際、市場には機能や特徴が異なるさまざまな製品が存在しています。ここでは、自組織に最適な製品を選ぶために、おさえておくべき3つの重要なポイントを解説します。
ポイント1:セキュリティ体制や運用リソース、自環境との親和性の確認
EDRを効果的に運用するには、検知されたアラートを分析し、適切な対応を判断できる専門知識をもった人材が不可欠です。まずは組織内にセキュリティ専門の部署があるか、24時間体制での監視が可能かといった運用リソースを客観的に評価しましょう。
あわせて、製品が対応するOSやサーバーの設置形態が、自組織の環境に適合するかを確認してください。導入済みのセキュリティツールとの親和性が高い製品を選べば、導入コストを最小限におさえることも可能です。自組織のリソースと環境を正しく把握することが、選定の第一歩となります。
ポイント2:必要な機能(検知・分析・対応)が網羅されているか確認する
自組織が懸念する攻撃や、事案発生時にどのような対応をおこないたいかを明確にし、合致する機能が備わっているかを確認することが大切です。
例えば、未知のマルウェア対策を重視するなら振る舞い検知の精度、迅速な対応が目的なら遠隔での端末隔離や調査支援機能が重要になります。
既知の脅威だけでなく、Emotetや未知のマルウェアを検知できるかも重要な選択ポイントです。MITRE ATT&CKフレームワークへの対応や、第三者機関による評価も参考にするとよいでしょう。
ログの分析精度は検知能力に直結するため、詳細な確認が欠かせません。脅威の侵入経路や影響範囲の調査を自動化・効率化する機能を備えた製品を選べば、事後対応の負担をより軽減できます。
ポイント3:MDRなど外部の運用支援サービスの利用も検討する
EDRの運用には高度なスキルが求められ、組織内のリソースだけで監視と対応をおこなうのは非常に困難な場合があります。そのような場合に有効な選択肢が、MDR(Managed Detection and Response)サービスの活用です。
MDRは、組織に代わりSOC(Security Operation Center)の役割を担い、EDRなどのツールを常時監視します。不審な挙動の分析からインシデント発生時の対応支援まで一貫して提供されるため、自前で高度な専門人材を確保せずとも、高いレベルの防御体制を維持できます。製品選定の際は、こうした外部サービスの利用もあわせて検討するとよいでしょう。
EDR・EPPと関連セキュリティ用語の関係性を整理

EDRやEPPの情報を収集するなかで、NGAV、NDR、XDRといった似たようなアルファベットの用語を目にする機会が多くあります。
それぞれが異なる技術的概念を示しているため、違いと関係性を整理することが、自組織のセキュリティ戦略を明確にするうえで役立ちます。
NGAV(次世代アンチウイルス)との違い
NGAV(Next Generation Antivirus)は、EPPの一種、あるいはその進化形と位置づけられています。
従来のEPPが主としてきたパターンマッチング方式に加え、AI(人工知能)や機械学習、振る舞い検知といった技術を活用することで、未知のウイルスなどを防ぐ「事前対策」の能力を強化したものです。
EPPが主に既知の脅威を防ぐのに対し、NGAVは未知の脅威への防御能力が高い点が特徴といえます。
ただし、NGAVもその目的はあくまで脅威の侵入防止にあり、侵入を許した後の詳細な調査や対応を専門とするEDRとは役割が異なります。
NDRとの違い
NDR(Network Detection and Response)は、ネットワーク上の通信トラフィックを監視して不審な挙動を検知するソリューションです。PCやサーバーなどのデバイス内部を監視するEDRに対し、NDRはネットワーク全体を俯瞰して脅威をあぶり出すという保護対象の違いがあります。
具体的には、EDRが個別のエンドポイントにおける詳細なログを分析するのに対し、NDRはネットワーク内を流れるデータの振る舞いを分析します。これにより、セキュリティソフトを導入できないIoT機器やプリンターなどの脆弱性を狙った攻撃、組織内での横展開といった動きを効率よく検知できるのが強みです。
近年は、未知の脅威を防ぐNGAVやEDRとあわせてNDRを導入し、エンドポイントとネットワークの両面から監視を強化する組織が増えています。両者は補完関係にあり、多層的な防御体制を築くうえで重要な役割を分担しています。
XDRとの違い
XDR(Extended Detection and Response)は、EDRの概念をさらに拡張したソリューション、あるいは考え方です。
EDRがPCやサーバーといったエンドポイントからのログ情報のみを監視・分析の対象とするのに対し、XDRは、エンドポイントに加えて、ネットワーク機器、ファイアウォール、クラウドサービス、メールサーバーなど、組織内のさまざまなセキュリティ製品からログ情報を横断的に収集し、それらを相関分析します。
これにより、単一の製品では見つけにくい巧妙なサイバー攻撃の兆候を、より広範な視点から検知し、組織全体のセキュリティを可視化して高度な対応を実現します。
まとめ

EPPとEDRは、それぞれ「侵入前の予防」と「侵入後の対応」という異なる役割を担う、相互補完的なセキュリティソリューションです。サイバー攻撃が高度化し続ける現代において、検知と対応の仕組みを構築することが不可欠です。
また、「侵入への対策」をより強固なものにするためには、その土台となる「管理」の徹底が欠かせません。
例えば、EDRで脅威を検知できたとしても、その端末の利用者が誰か、OSのアップデート状況や他のソフトウェアの導入状況はどうなっているか、といった情報が即座に把握できなければ、迅速な対応は困難になります。
弊社が提供するIT資産管理ツール「SS1」「SS1クラウド」では、組織内のIT資産状況を詳細に可視化し、セキュリティリスクを根本から低減させます。PC本体だけでなく、導入されているソフトウェアや周辺機器、ネットワーク機器までを一元管理することで、情報漏えいのリスクとなるシャドーITの抑止や、脆弱性の放置を防ぐことが可能です。また、正確なIT資産台帳は、ライセンスの最適化といったコスト管理の面でも大きなメリットをもたらします。
こうしたツール群を適切に組み合わせることで、「予防(脆弱性対策)」「検知(EPP/EDR)」「管理(IT資産管理)」の観点からバランスの取れた、隙のないセキュリティ体制を構築できます。
日々変化する脅威に備えるためにも、自社の状況に合わせた最適な「三段構え」の仕組みを整えましょう。
EDR×IT資産管理の事例:日清紡ホールディングス株式会社 様

日清紡ホールディングス株式会社様では、IT資産管理ツール「SS1」と他社のEDR製品をあわせて活用し、効率的なセキュリティ管理を実現されています。EDR製品は詳細なデータを確認できる反面、情報が膨大で状況把握に時間を要する場合があります。まずはSS1の「PC操作ログ」を確認する運用を取り入れ、その後EDRで詳細な分析をおこなうことで調査のスピードが格段に向上したとのことです。
詳細は下記の導入事例をご参照ください。
IT資産管理ツールSS1/SS1クラウドを開発・販売している、株式会社ディー・オー・エスの営業企画部メンバーで構成されています。IT資産管理・ログ管理・情報セキュリティ対策など、情シス業務の効率化に役立つ最新トレンド情報を随時発信中!

セミナー情報