情シスに求められるスマホ法(スマホソフトウェア競争促進法)への対応とは?

情シスに求められるスマホ法(スマホソフトウェア競争促進法)への対応とは?

これまで、iOSのアプリはAppleが提供する「App Store」、AndroidのアプリはGoogleが提供する「Google Playストア」からインストールすることが一般的でした。

しかし、これらの「公式ストア以外からアプリを導入しにくい仕組みが公平な競争を妨げている」という指摘があります。こうした状況を受けて制定されたのが、スマホ法(スマートフォンソフトウェア競争促進法)です。

利用者側企業の担当者としてスマートフォン利用を管理する担当者、そして自社アプリの開発者を管理する立場の方向けに必要な対応を解説します。

スマホ法とは

スマホ法(スマホソフトウェア競争促進法)は、スマートフォンのソフトウェアなどの開発・提供における公平な競争を守るために作られた法律です。2024年6月に公布され、2025年12月に全面施行されました。

主にモバイルOS(iOS、Android)、アプリストア、ウェブブラウザ、検索エンジンを対象として、巨大な影響力を持つ事業者がその立場を不当に使うことを防ぐのが目的です。

たとえば、iOSのApp StoreやAndroidのGoogle Playストアのように、自社のアプリストアだけを使わせて他のストアを事実上使えなくすることや、外部からのアプリ導入(サイドローディング)を過度に制限すること、および差別的な扱いが禁じられます。

また、OSの特定機能を自社製アプリでしか実装できないよう制限すること、原則として自社の課金システムの利用を強制することも禁止されています。

この法律の施行により、iOS 26.2では「アプリのインストール」についての設定画面が追加されました。

実際のiPhone「アプリのインストール」設定画面

また、アプリ内で外部販売へのリンクや価格情報を表示させない、特定のWebブラウザしか使えなくする、利用者の本人確認方法を一方的に決める、といったことも規制対象となっています。

指定事業者に課される義務

この法律の対象となる事業者は公正取引委員会によって「指定事業者」として定められ、上記で解説したような禁止事項があります。さらに、利用者や開発者にとっての利便性・透明性を高める義務が課されます。

たとえば、次のようなことが求められます。

•取得するデータの種類、利用目的、第三者提供の有無と条件を明示すること
•ユーザーが自分のデータを他のサービスに移せるようにする仕組み(データポータビリティの確保)を整えること
•初期設定から変更しやすくし、アプリやサービスをユーザーが変更できるようにすること

また、仕様やルールを変えるときには事前に情報を出して対応期間を確保し、アプリ開発者が準備できるようにする義務もあります。これらは、利用者がブラウザや検索エンジン、アプリの配布経路を自由に選べるようにするための仕組みです。

このため、AppleやGoogleなどは、EUのデジタル市場法(DMA)での対応経験を参考にしながら、日本のルールに合わせた仕組みを整えています。具体的には、第三者アプリストアを使えるようにする一方で、セキュリティやプライバシー、青少年保護を理由に一定の基準や認証制度を設けるという対応が考えられます。

この法律により課金システムが開放されることで、開発者にとっては手数料負担が軽くなるといったメリットが期待されますが、安全性確保のための例外措置も認められる余地があります。公正取引委員会が出すガイドラインに従って、事業者は申告や確約の手続きで自主的にルールを整備していくことが想定されます。

利用者や開発者、ビジネスへの影響

利用者としては選択肢が増え、これまでより安価にアプリをインストールできる可能性があります。また、第三者のアプリが高度なOSの機能を使えることで、より便利なアプリが開発されることも考えられるでしょう。

アプリ開発者としても、サイドローディングや第三者ストアの利用が広がることで、アプリを配布するチャネルが増えます。これによりプラットフォーム手数料が安くなり、これまで難しかった収益モデルを試しやすくなる可能性があります。たとえば、これまでKindleアプリでは書籍を購入できませんでしたが、最近はアプリ内からリンクをたどって購入できるようになりました。

このようなメリットがある一方で、第三者によるアプリの配布が増えると、マルウェアなどが配布されるリスクも高まります。

このため、企業の情報システム担当者としては、従業員に配布しているスマートフォンについて、勝手にアプリストアを変更することがないようにMDM(モバイルデバイス管理)で管理する、といった対応が考えられます。また、危険なアプリの見分け方や、不審なアプリを勝手にインストールしないことなど、従業員に対する教育を実施する方法もあるでしょう。

開発者としても、どのようなプラットフォームでアプリを配布するのかを検討し、セキュリティ面やプライバシー保護などを意識した提供、広報が必要になります。

まとめ

スマホ法は利用者にとっても開発者にとってもメリットがある一方で、適切に使わないとリスクが高まることを意味します。企業の管理者としては、その影響範囲を理解し、対策を実施することが求められます。

管理方針の見直し、MDMの導入、アプリ配布の制御など、端末管理を強化するようにしましょう。さらに、開発体制を整備し、複数チャネルへの対応や課金、セキュリティ設計を含めた仕組み作りを進めることが求められています。

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著者プロフィール
増井 敏克氏(ますい としかつ)
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)、情報処理技術者試験にも多数合格。
ビジネス数学検定1級。

「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や各種ソフトウェア開発、データ分析などをおこなっている。

著書に『図解まるわかり セキュリティのしくみ』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『図解まるわかり アルゴリズムのしくみ』『IT用語図鑑』『IT用語図鑑[エンジニア編]』『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『プログラマ脳を鍛える数学パズル』『プログラマを育てる脳トレパズル』(以上、翔泳社)、『プログラマのためのディープラーニングのしくみがわかる数学入門』『プログラミング言語図鑑』(以上、ソシム)、『基礎からのプログラミングリテラシー』(技術評論社)、『RとPythonで学ぶ統計学入門』(オーム社)などがある。