DLPとは?仕組み・機能から製品の選び方まで解説

従業員によるデータの持ち出しやメールの誤送信など、内部からの情報漏洩は、企業規模を問わず発生しうるリスクです。従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれないこれらの問題に対し、どのようなツールを導入すべきか判断するのは容易ではありません。
この記事では、情報漏洩対策の有効なソリューションであるDLPについて、その基本的な仕組みや機能、ほかのセキュリティツールとの違いを解説します。自組織の課題解決に最適な製品を選定するための指針としてご活用ください。
・DLPはどのようにデータを識別する?2つの検知・判別の仕組み
・DLPの代表的な5つの機能|どのような情報漏洩を防げるのか
・IT資産管理ツールやEDRとの違いは?DLPの役割と使い分け
・DLPを導入する3つのメリット|内部不正からヒューマンエラーまで対策
・自組織に最適なDLP製品を選ぶためのポイント ・DLPに関するよくある質問 ・まとめ
DLPとは?機密情報など「データそのもの」を監視し漏洩を防ぐ仕組み

DLPとは「Data Loss Prevention」の略称で、日本語では「データ損失防止」と訳されるセキュリティソリューションです。組織にとって重要なデータを識別し、外部への漏洩や不正利用を監視・制御します。
保護対象は外部へ送信されるデータだけではありません。サーバやPCに保存されている「保存中」、メールやWebを介して送信される「転送中」、コピーや印刷などの操作がおこなわれる「使用中」という3つの状態を対象とします。
従来型のファイアウォールが、主にIPアドレスやポート、通信プロトコルなどを基準に通信を制御するのに対し、DLPは「データの中身(コンテンツ)」や分類、利用状況に応じてポリシーを適用する点が特徴です。なお、次世代ファイアウォールのなかにも、アプリケーションや通信内容を検査できる製品があります。
DLPは、キーワードや正規表現、機密ラベル、フィンガープリントなどを用いて保護対象のデータを識別します。ポリシーに違反する操作を検知した場合は、製品や設定に応じて、警告の表示やログの記録、上長承認の要求、暗号化、操作のブロックなどを実行します。
これらの機能により、退職者による顧客情報の持ち出しといった内部不正に加え、メールの誤送信やUSBメモリへの誤ったコピーなども抑止できます。データの保存場所や通信経路だけでなく、その内容と取り扱い方を基準に保護することが、DLPの役割といえるでしょう。
DLPはどのようにデータを識別する?2つの検知・判別の仕組み

DLPが機密情報を保護するためには、まず監視対象のデータが「重要であるか」を正確に識別する必要があります。このデータの検知・判別の仕組みは、DLP製品の精度を左右する重要な要素です。
主に使われる代表的な仕組みとして、「フィンガープリント」と「パターンマッチング」の2つの方式が挙げられます。
フィンガープリントによる高精度なデータ判別
フィンガープリント方式は、保護したい機密情報ファイルから「フィンガープリント」と呼ばれる指紋のような固有の情報を生成し、データベースに登録しておく検知方法です。
DLPツールは、PCやネットワーク上を流れるデータとデータベース上のフィンガープリントを照合し、一致または部分的に一致した場合に機密情報と判定します。製品によっては、もとのファイルそのものでなく、一部がコピー&ペーストされた断片的なデータや派生した文書であっても検出できるため、機密文書や設計図といった定型化しにくい非構造化データの判別に適しています。
ただし、検出できるファイル形式や必要な一致量、精度は製品によって異なり、画像だけのファイルやパスワード保護されたファイルは対象外となる場合があります。
キーワードや正規表現を用いたパターンマッチング
パターンマッチング方式は、あらかじめ設定したルールに基づいて機密情報を識別する仕組みです。例えば、「社外秘」「極秘」といった特定のキーワードを含む文書を機密情報としてチェックしたり、「正規表現」というルールを用いてマイナンバーやクレジットカード番号など、特定の文字数や形式を持つ文字列を個人情報として検出したりします。
この方法は、保護対象が明確な場合に非常に有効で、組織のセキュリティポリシーに応じて柔軟なルール設定が可能です。検知のしきい値(何件の該当で違反とみなすか)を調整することで、誤検知と検出漏れのバランスをとれます。
DLPの代表的な5つの機能|どのような情報漏洩を防げるのか

DLPは、データの識別・検知技術を基盤として、さまざまな経路からの情報漏洩を防ぐための具体的な機能を備えています。これらの機能によって、組織は多様化する脅威に対して多層的な対策を講じることが可能です。
ここでは、DLPがもつ代表的な5つの機能と、それぞれがどのような情報漏洩シーンで役立つのかを解説します。
重要データの操作を監視するコンテンツ監視機能
コンテンツ監視機能は、DLPの中核をなす機能の一つです。
サーバやPC内に保管されている重要データに対して、「誰が」「いつ」「どのような操作(コピー、移動、送信、印刷など)」をおこなったかを監視し、ポリシー違反の発生状況とあわせて操作ログとして記録します。このモニタリングにより、不正な操作や不審なアクセスの兆候を早期に発見できます。
また、インシデントが発生した際には、記録されたログを追跡することで、原因究明や影響範囲の特定を迅速におこなうことが可能になります。
USBメモリなど外部デバイスへの書き出しを制御する機能
エンドポイント(PCやサーバなどの端末)に導入されるDLPは、USBメモリや外付けハードディスク、スマホ(スマートフォン)といった外部デバイスへのデータ書き出しを制御する機能を持ちます。
管理者は、ポリシーを設定することで、特定の重要データを外部デバイスへコピーすることを禁止したり、許可されたデバイス以外への書き出しをブロックしたりできます。これにより、従業員による安易なデータの持ち出しや、紛失・盗難による情報漏洩リスクを低減させます。
データの印刷やコピー、画面キャプチャを制限する機能
情報漏洩はデジタルデータだけでなく、紙媒体への印刷や、PC画面のキャプチャを通じてもおこりえます。
エンドポイント型DLPのなかには、ファイルの内容を監視し、機密情報が含まれる場合に印刷操作を制限できる製品があります。同様に、クリップボードへのコピーや、スクリーンショットの取得といった操作も制御可能です。
これにより、物理的な情報の持ち出しや、画像データとしての情報流出を防ぎます。
Webサイトへのファイルアップロードを監視・ブロックする機能
クラウドサービスの普及に伴い、Webサイトやオンラインストレージへのファイルアップロードが情報漏洩の新たな経路となっています。
ネットワーク型DLPは、組織のネットワーク出口を監視し、外部のWebサイトへの通信内容をチェックします。機密情報を含むファイルが許可なくアップロードされようとした際に、その通信を検知してブロックする制御機能を提供します。
これにより、個人のクラウド利用による情報漏洩対策を強化できます。近年は、生成AIのプロンプトへの入力や未承認のクラウドサービスへの持ち出しも新たな経路となっており、これらを制御対象とする製品も増えています。
メールによる情報送信を監視・制御する機能
メール誤送信は、情報漏洩の主要な原因の一つです。
DLPは、送信されるメールの宛先、件名、本文、添付ファイルの内容をリアルタイムで監視する機能を持ちます。製品によっては、機密情報が含まれていると判断された場合に、送信を一時的に保留して送信者に警告を表示したり、上長の承認がなければ送信できないように制御したりできます。
このメール監視・制御機能により、ヒューマンエラーによる重大なインシデントを未然に防ぎます。
IT資産管理ツールやEDRとの違いは?DLPの役割と使い分け

DLPとしばしば比較されるセキュリティツールに、「IT資産管理ツール」や「EDR」があります。いずれもPCなどの端末を対象とする点は共通しますが、その目的と役割は大きく異なります。まずは3つの違いを整理します。
| DLP | IT資産管理ツール | EDR | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 重要データの外部流出を防ぐ | IT資産を把握し適正に管理する | 侵害の兆候を検知し被害拡大を抑える |
| 監視対象 | ファイルの中身や通信内容といったデータ | PCやソフトウェアなどの資産と利用状況 | 端末上のプロセスや通信などの挙動 |
| 主な機能 | データ操作の監視、警告表示、送信・書き出しのブロック | 資産情報の収集、ライセンス管理、操作ログ取得 | 挙動の記録と検知、侵害範囲の調査、端末の隔離 |
3つのツールは競合するものではなく、守る対象が異なります。それぞれの位置づけを以下で補足します。
DLPとIT資産管理ツールとの違い
IT資産管理ツールとは、PCの台数やソフトウェアライセンス、OSのバージョンといったIT資産を台帳化し、正確に把握することを主な目的としたツールです。
一方でDLPは、ファイルや通信の中身を監視し、機密情報の流出そのものを止めることに特化しています。管理する軸が「モノ」か「情報の中身」かが、両者の決定的な違いです。
昨今は操作ログを取得できるIT資産管理ツールも増えており、DLPと併用すれば「誰がどのような操作をおこない、どのデータが動いたのか」を多角的に把握できます。
操作ログを取得できるIT資産管理ツールの例
弊社が提供するIT資産管理ツール「SS1」「SS1クラウド」も、IT資産の台帳管理にあわせて、PC操作ログやWeb閲覧ログ、メール送受信ログ、印刷ログなどを取得できます。
ファイルのコピーや外部デバイスへの書き出しといった操作の記録が残るため、情報漏洩が疑われる場面での調査にも活用いただけます。USBメモリなどのデバイス利用制限や、Webサイトへのファイルアップロード監視にも対応しています。
DLPのようにデータの中身を基準に送信を止める製品ではありませんが、「どの端末で、誰が、どのような操作をしたのか」を把握する手段として、DLPの検討とあわせてご確認ください。
DLPとEDRとの違い
EDR(Endpoint Detection and Response)は、マルウェア感染などのサイバー攻撃による侵害の兆候をエンドポイント上で検知し、調査や封じ込めを迅速におこなうためのツールです。
これに対しDLPは、監視対象を「挙動」ではなく「情報の中身」に置き、内部からの情報漏洩を防ぐことに主眼を置いています。EDRで外部からの侵入に備えつつ、DLPで内部からのデータ流出を止めるという組み合わせにより、より強固なセキュリティ体制を構築できます。
DLPを導入する3つのメリット|内部不正からヒューマンエラーまで対策

DLPの導入は、組織に多角的なセキュリティ上のメリットをもたらします。単に情報を保護するだけでなく、インシデントの予防から事後対応の効率化、さらには管理者の負担軽減にまで寄与します。
ここでは、DLPを導入することで得られる主要な3つのメリットについて、内部不正対策やヒューマンエラー対策の観点から解説します。
悪意ある情報の持ち出しと操作ミス双方の漏洩を防止する
DLP導入の最も大きなメリットは、情報漏洩の代表的な要因である「悪意ある内部不正」と「意図しない操作ミス」の両方に対策できる点です。退職者による顧客情報の持ち出しといった意図的な不正行為は、データのコピーや送信をブロックすることで防ぎます。
同時に、メールの宛先間違いや添付ファイルの間違いといったヒューマンエラーに対しても、送信前に警告を表示したり、上長承認を必須としたりすることで、うっかりミスによる漏洩を未然に防止する効果が期待できます。
情報漏洩のリスクをリアルタイムで検知・通知できる
情報漏洩のリスクをリアルタイムで検知し、即座に対応できる点もDLPの強みです。
ポリシーに違反する操作、例えば機密情報がUSBメモリにコピーされたり、許可されていないクラウドサービスにアップロードされたりした場合、DLPはそれを瞬時に検出します。同時に、セキュリティ管理者へアラートを通知する機能も備わっており、インシデントの発生を把握し、被害が拡大する前に初動対応をとることが可能となります。
この迅速な監視・検出体制は、インシデント対応の質を大きく向上させます。
セキュリティ管理者の運用負荷を軽減することにつながる
DLPは、セキュリティ管理者の運用負荷を軽減するうえでも有効な対策です。
あらかじめ設定したポリシーにもとづいてシステムが自動でデータの監視と制御をおこなうため、管理者がすべてのログを目視で確認する必要がありません。アラート通知によって対応すべき事象が明確になり、効率的なインシデント対応が可能になります。
また、有事の際にはDLPが記録したログが強力な証跡となり、原因調査や影響範囲の特定にかかる時間と労力を大幅に削減できます。ただし、導入初期には保護すべきデータの棚卸しやポリシー設計、誤検知への対応が必要になるため、運用が軌道に乗るまでは一定の負荷が発生する点に留意しましょう。
自組織に最適なDLP製品を選ぶためのポイント

DLP製品は、さまざまなメーカーから多様な種類が提供されており、それぞれ機能や価格、提供形態が異なります。自組織のセキュリティ要件や環境にあわない製品を導入してしまうと、期待した効果が得られないばかりか、運用が形骸化してしまう恐れもあります。
ここでは、数ある選択肢のなかから自組織に最適なDLP製品を選ぶために比較・検討すべきポイントを紹介します。
監視対象にあわせた提供形態で選ぶ
DLP製品は、提供形態によって主に「ホスト型(エンドポイント型)」「ネットワーク型」「クラウド型」の3種類に大別されます。
ホスト型はPCやサーバなどの端末に直接エージェントを導入し、その端末内のデータを監視します。オフライン状態でも監視できるのが特徴です。
一方、ネットワーク型は社内ネットワークの出口に設置し、その監視ポイントを通過するメールやWeb通信、ファイル転送などを検査します。暗号化通信や、社外から直接クラウドへ接続する通信を検査するには、復号のための仕組みやエンドポイント型との併用が必要になる場合があります。端末への負荷が少ない点がメリットです。
クラウド型は、SaaSやクラウドストレージ上のデータを対象に監視・制御をおこなうもので、テレワークやクラウド活用が進んだ環境と相性が良い形態です。テレワークの導入状況やクラウドサービスの利用頻度など、自組織のIT環境や監視したい対象にあわせて適切な種類を選択しましょう。
自組織に必要な監視機能がそろっているか確認する
DLP製品によって搭載されている監視機能はさまざまです。
まずは自組織が保護すべき情報資産(個人情報、技術情報、財務情報など)を、ファイルやデータベースのレコードなどの単位で整理し、あわせてその保管場所や機密区分を明確にしたうえで、想定される漏洩経路(メール、USB、Web、印刷など)を洗い出すことが重要です。そのうえで、各製品の機能を比較し、自組織の要件を満たせるかチェックしましょう。
例えば、メール誤送信対策を最優先するならメール連携機能が、外部デバイス経由の情報持ち出しを懸念するならデバイス制御機能が充実している製品を選ぶべきです。
トラブル発生時に頼れるサポート体制は充実しているか
DLPの導入や運用には専門的な知識が求められる場面も少なくありません。特に導入初期のポリシー設定や、インシデント発生時のトラブルシューティングでは、メーカーや販売会社のサポートが不可欠です。
サポート体制を比較する際は、日本語での問い合わせに対応しているか、対応時間は自組織の業務時間にあっているか、問い合わせ方法(電話、メール、チャットなど)は何かなどを確認しましょう。導入実績が豊富なメーカーや、手厚いサポートサービスを提供している販売会社を選ぶと安心です。
導入後の運用まで見据えたコストで比較検討する
DLPの導入にあたっては、コストの比較も重要な選定ポイントです。ただし、初期導入費用(ライセンス料金や構築費用)だけでなく、導入後に発生するランニングコストも考慮にいれる必要があります。
例えば、年間の保守費用やライセンス更新料金、管理する端末数が増えた場合の追加費用など、長期的な視点で総コストを比較検討することが求められます。
複数のメーカーから見積もりを取り、価格と機能、サポート内容のバランスがとれた製品を選定しましょう。
DLPに関するよくある質問

DLPの導入を検討するにあたり、基本的な定義やほかのツールとの違い、導入対象などについて疑問が生じることがあります。ここでは、DLPに関するよくある質問とその回答をまとめました。
DLPとは、具体的にどのようなセキュリティ対策ですか?
DLPとは、データの中身(コンテンツ)を監視し、個人情報や設計図などの重要情報が、メールへの添付やUSBメモリへのコピーといった操作によって不正に外部へ送られるのを防ぐセキュリティ対策です。情報そのものを守ることに特化している点が特徴です。
DLPを導入すれば情報漏洩は完全に防げますか?
完全に防げるわけではありません。暗号化されたファイルや画像化された情報、管理外の端末を経由した持ち出しなど、検出が難しいケースもあります。また、検知ルールが広すぎると誤検知が増え、狭すぎると検出漏れが生じます。
IT資産管理ツールやEDR、CASBなど、ほかの対策と組み合わせて多層的に守ることが重要です。
どのような組織でDLPの導入が特に推奨されますか?
個人情報や顧客情報、知的財産(技術情報、開発情報)など、漏洩した場合の経営的損害が大きい機密情報を扱う組織には、特にDLPの導入がおすすめです。また、内部不正や従業員の操作ミスによる情報漏洩対策を強化したいと考えている組織にとって有効なソリューションです。
まとめ

DLPは、従来のセキュリティ対策では防ぐことが難しかった内部からの情報漏洩に対し、「データそのもの」を監視することで直接的な対策を可能にするソリューションです。その機能は、悪意ある情報の持ち出しから、メール誤送信のようなヒューマンエラーまで幅広くカバーします。
自組織に最適なDLP製品を導入するためには、保護したい情報の種類や漏洩経路を明確にし、提供形態や機能、サポート体制、コストを総合的に比較検討することが求められます。本記事で解説したポイントを参考に、自組織のセキュリティ強化に向けた製品選定を進めてください。
IT資産管理ツールSS1/SS1クラウドを開発・販売している、株式会社ディー・オー・エスの営業企画部メンバーで構成されています。IT資産管理・ログ管理・情報セキュリティ対策など、情シス業務の効率化に役立つ最新トレンド情報を随時発信中!

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