「サイバーセキュリティ月間」などのイベントを啓発に活かす
セキュリティについては「特定の日に危険性が高まる」ということはありませんので、普段から気をつけておくことが重要です。しかし、普段は何も問題が起きないため、つい後回しになることが多いものです。
そんな中、注意喚起をするために、政府などが実施するイベントを啓発に活かす方法について紹介します。
サイバーセキュリティ月間とは
内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を中心に、産官学民が連携してセキュリティ意識を高めるイベントとして2月1日から3月18日に開催される「サイバーセキュリティ月間」があります。家庭や職場でセキュリティについて話し合い、一人一人が日頃から対策するきっかけになるイベントとして毎年開催されています。
今年も2月1日から始まっており、広告などを目にした人も多いのではないでしょうか。今年はお笑いコンビのチョコレートプラネットが参加し、「セキュリTT兄弟」という見出しのポスターやバナー広告も見かけます。
さまざまなイベントもこの期間に開催されますので、ぜひチェックしてみてください。
イベントがもたらす効果
利用者の意識を高めるために、「サイバーセキュリティ月間」などのイベントを活用することは、次に挙げるようにさまざまな面から有効な手段だと言われています。
1. 意識の向上
多くの人は、普段の生活の中でそれほどセキュリティを意識していません。ニュースなどで事件が報じられると「怖い」と感じることはあるものの、それによって行動を起こすことはあまり多くありません。
しかし、セミナーやワークショップ、イベントなどが多く開催され、具体的な脅威や対策を目にする機会を増やすことで、参加者の意識を高めることができます。
2. 知識の更新
ある程度の経験を積むと、昔学んだ知識で問題ないと考えがちです。しかし、定期的にイベントを開催することで、最新のトレンドや技術、ベストプラクティスなどの知識を更新できます。
年に1回程度、セキュリティ講習を実施する企業もありますが、こういったイベントを通して、少しでも多くの人の知識を更新することで、組織全体としてのセキュリティを強化できます。
3. 人と人とのつながりの強化
イベントを開催することは、同じ関心を持つ人々や企業が集まる場を提供することだといえます。これにより、興味がある人同士がつながり、一種のコミュニティが形成されるでしょう。
参加者同士の情報交換によって、それぞれが経験してきたことを共有することで、相互に学び合い、社会全体としてのセキュリティを強化できます。
啓発の方法
このようなイベントに合わせて啓発するときは、タイミングと方法が大切になります。啓発をするためにこの期間を選んでいるにも関わらず、それが知られていないと意味がありません。
そこで、社内外に情報を発信することが重要です。たとえば、社内であれば社内報や社内のSNS、社長からの訓示などで全従業員に知らせます。
また、社外であれば自社のWebサイトやSNSなどで情報を発信するとともに、プレスリリースなどを発行するのも1つの方法でしょう。
特にセキュリティの向上のような施策は、社会全体として取り組まなければならないことです。ある会社が取り組みを発表することで、その取引先や同業他社が追随して取り組むようになると、結果として社会全体の安全性が高まります。
サイバー攻撃は企業の規模や業種などを問わず発生し、国境も越える可能性があります。このため、組織の壁、国や地域の壁を超えた協力が不可欠で、そのための情報発信が求められているのです。
その他のイベント
このようなイベントは国などが主催する物だけではありません。国民の祝日のように法的に定められたものではなくても、日付に対してさまざまな「日」が設定されており、イベントが開催されることも多いものです。
たとえば、バレンタインデーやホワイトデー、父の日や母の日、エイプリルフールなどは有名です。
今回紹介しているのは「サイバーセキュリティ月間」ですが、その開始日の2月1日は「サイバーセキュリティの日」と定められています。
それ以外でも、有名なものとして9月1日は「防災の日」のようにさまざまな企業が避難訓練など防災に関するイベントを実施することが多いでしょう。
ITに関連する日付として、1月28日の「データプライバシーの日」、3月31日の「世界バックアップデー」、5月の第1木曜日の「世界パスワードデー」、10月29日の「インターネットの日」、11月21日の「インターネット記念日」などがあります。
また、今回のサイバーセキュリティ月間に近いものとして、5月15日から6月15日まで開催される「情報通信月間」などもあります。
こういった日付を活用して、意識を高めるきっかけにするのもよいでしょう。
まとめ
新入社員研修や年に1度のセキュリティ研修くらいしか、従業員にセキュリティの意識を高める通知ができていない、という企業は多いものです。今回紹介したようなイベントを使うことで、セキュリティや最新のIT情報に触れる機会を増やすことで、従業員の意識も変わってくるかもしれません。

増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)、情報処理技術者試験にも多数合格。
ビジネス数学検定1級。
「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や各種ソフトウェア開発、データ分析などをおこなっている。
著書に『図解まるわかり セキュリティのしくみ』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『図解まるわかり アルゴリズムのしくみ』『IT用語図鑑』『IT用語図鑑[エンジニア編]』『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『プログラマ脳を鍛える数学パズル』『プログラマを育てる脳トレパズル』(以上、翔泳社)、『プログラマのためのディープラーニングのしくみがわかる数学入門』『プログラミング言語図鑑』(以上、ソシム)、『基礎からのプログラミングリテラシー』(技術評論社)、『RとPythonで学ぶ統計学入門』(オーム社)などがある。