情報処理技術者試験の変更内容とは?

1969年の開始以来、国家資格として日本のIT人材育成を支えてきた情報処理技術者試験が、歴史的な転換期を迎えています。2026年度から試験の実施方式が大きく変わり、さらに2027年度には試験区分体系そのものの抜本的な再編が予定されています。

特に情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)については、SCS評価制度におけるセキュリティ専門家に該当する人材として、今後注目が高まることが予想されます。人材育成や評価制度の見直しを検討している企業では、これらの変更を正確に把握しておきましょう。

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2026年度は全試験がCBT化

2026年度(令和8年度)における最大の変更点は、応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験のCBT(Computer Based Testing)方式への移行です。ITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験ではすでにCBT化されていましたが、今回の変更により情報処理技術者試験のすべての区分がCBT方式で受験できるようになります。

CBT方式では画面上で問題が出題され、その解答を画面内で提出することで完結する試験形式です。複数の選択肢から選ぶ問題ではマウスのクリックで、記述や論述が必要な問題ではキーボードによる入力で解答します。

これまでは手書きでの解答が求められていた高度試験の論述問題では、書き換えが手軽になり助かる人も多いでしょう。

なお、2026年度は出題形式や出題数、試験時間はすべて従来どおりであり、問われる知識や技能の範囲にも変更はありません。方式だけが変わり、中身は同じなので、これまで受験を検討していた従業員にとっては影響が少ないでしょう。

試験日程の変更

内容は変わりませんが、CBT化に伴って試験スケジュールは従来の年2回(春:4月、秋:10月)から変わります。2026年度については、以下の日程が予定されています。

・前期試験:2026年11月頃実施(旧・春期試験に相当する試験区分)
・後期試験:2027年2月頃実施(旧・秋期試験に相当する試験区分)

従来のように、「特定の1日に全国で一斉に実施される」という形式から、一定期間内の複数日程で実施するスタイルに変わるため、受験者は自身の都合に合わせて受験日時を選択できるようになります。

ただし各期につき受験は1回のみです。試験名称も「午前・午後」から「科目A・科目B」に統一されます(高度試験ではA-1・A-2などの細分化あり)。

従来の春期試験のスケジュール感で受験計画を立てていた従業員にとっては、2026年度の前期試験は11月まで待たなければなりません。受験の奨励や合格報奨金制度を設けていた場合、社内の制度スケジュールと突き合わせて早めに確認と調整が求められます。

それに加え、2027年度からは試験区分体系そのものが刷新される予定です。2026年度の試験は、現行試験合格をつかみ取れる最後の年度でもあります。経済産業大臣名の合格証書は新制度以降も有効な国家資格の証として活用できることから、2026年度中に受験・合格を目指す意義は依然として大きいでしょう。

資格取得を目指す従業員に対しては、この点を積極的に周知することも考えられます。

2027年度以降の試験区分体系の変更

2026年3月、経済産業省とIPAは2027年度から導入予定の新試験区分体系の見直し案を公表しました。「Society 5.0時代のデジタル人材育成」を旗印に、DX推進やAI活用を前提とした新たな体系へと移行するものです。主な変更点は以下のとおりです。

①データマネジメント試験(仮称)の新設

AI活用の前提となるデータ整備や管理スキルを評価する新試験が新設されます。ITパスポートの次のステップとして、情報セキュリティマネジメント試験と同じレベルに位置づけられ、IT技術者に限らずデータを扱うビジネスパーソン全般が対象となっています。

情報システム部門だけでなく、営業やマーケティング担当者、経営企画など幅広い部門の社員にも関係する資格になりそうです。

②プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)の新設

現行の応用情報技術者試験と各高度試験が統合・再編され、「マネジメント」「データ・AI」「システム」という3つの領域に整理された新試験に生まれ変わります。現行の高度試験合格者への科目免除制度も検討されており、既存資格保有者へのスムーズな移行が図られる見込みです。

③ITパスポート・基本情報・情報セキュリティマネジメント試験の出題見直し

それぞれの試験の出題分野が「ビジネス」「テクノロジ」「セキュリティ・倫理」の3つのカテゴリに整理され直し、DXマインドやAI時代のセキュリティ・倫理に関する出題が強化される見込みです。

担当者が今すぐ取るべき行動とは

社内に受験支援や資格奨励といった制度を用意しているのであれば、2026年度の新スケジュールとの整合性が取れているかを確認します。試験日程や申込期間が変わるため、これまでの「4月・10月に申込み」という習慣は通用しなくなります。

また、2027年度の新試験体系の動向を継続的に注視しなければなりません。2026年夏頃にはシラバスやサンプル問題の公表が予定されているため、スキルアップの計画を新体系に合わせて再設計しなければなりません。

特に「データマネジメント試験」は情報システム部門以外の人材育成にも直結するため、関連部門との連携も視野に入れておきたいものです。変化の波に乗り遅れず、自社の人材戦略に活かしていきましょう。

著者プロフィール
増井 敏克氏(ますい としかつ)
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)、情報処理技術者試験にも多数合格。
ビジネス数学検定1級。

「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や各種ソフトウェア開発、データ分析などをおこなっている。

著書に『図解まるわかり セキュリティのしくみ』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『図解まるわかり アルゴリズムのしくみ』『IT用語図鑑』『IT用語図鑑[エンジニア編]』『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『プログラマ脳を鍛える数学パズル』『プログラマを育てる脳トレパズル』(以上、翔泳社)、『プログラマのためのディープラーニングのしくみがわかる数学入門』『プログラミング言語図鑑』(以上、ソシム)、『基礎からのプログラミングリテラシー』(技術評論社)、『RとPythonで学ぶ統計学入門』(オーム社)などがある。