ITSS(ITスキル標準)とは?7段階のスキルレベルや資格、11の職種を紹介

この記事では、ITSSで示されているIT人材に求められる7段階のスキルレベル、そのレベルに対応する資格、そしてITサービスに関わる11の職種について解説します。
近年、ITSSはセキュリティ体制強化の観点からも注目されており、サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)では、★3基準の評価者である「セキュリティ専門家」に求められる能力の目安として参照されています。
本記事ではその位置づけについても紹介します。
・全体像を構成する2つの評価軸
・【レベル別】ITSSに対応する情報処理技術者試験の資格一覧
・【組織向け】ITSSの運用におけるポイント
・ITSSと他のスキル標準(UISS・ETSS・CCSF)との違い
・先端IT領域に対応した新指標「ITSS+(プラス)」とは?
・まとめ
ITSS(ITスキル標準)はIT人材のスキルを可視化する指標

ITSS(IT Skill Standard:ITスキル標準)は、IT関連サービスを提供する人材の能力を可視化し、育成や評価に活用するために作られた指標です。
経済産業省が2002年に策定し、2004年以降はIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が改訂や普及活動を担っています。
策定された背景
1990年代後半以降、IT産業の飛躍的な発展によりビジネスモデルが激変し、高度なスキルをもつ人材の確保が組織にとって喫緊の課題となりました。しかし当時は、個人の能力を客観的に測る共通の物差しがなく、適切な採用や育成計画を立てることが難しい状況にありました。
国としてもIT産業の強化を重要戦略に位置づけるなかで、効果的に人材育成を進めるには、習得すべきスキルやキャリアパスを標準化する必要があると認識されます。こうした背景から、組織が共通して活用できる実用的な指標として、経済産業省によりITスキル標準が策定されました。
専門性を可視化して目指すべきロールモデルを明確に提示することで、業界全体の底上げを図ることが狙いです。
全体像を構成する2つの評価軸

ITSSは、IT人材の能力を多角的に評価するため、「スキルレベル」と「専門分野」という2つの評価軸で構成されています。この2つの軸を組み合わせた表形式のフレームワークにより、IT人材は自身の現在位置を客観的に把握し、目指すべきキャリアパスを具体的に描くことが可能になります。

(ITスキル標準V3 2008のキャリアフレームワーク)
軸1:IT人材の能力を示す7段階のレベル
ITSSのスキルレベルは、基礎知識を備えた入門者から世界で通用するプロフェッショナルまで、7段階で構成されています。各レベルには、実務で発揮すべき能力の到達度合を示す達成度指標が設定されており、個人の能力を客観的に評価する物差しとなります。
| レベル1 | IT人材としての基礎知識を身につける入門者 |
|---|---|
| レベル2 | 上位者の指導のもとで実務を担う若手人材 |
| レベル3 | 担当業務を独力で遂行できる中堅人材 |
| レベル4 | 専門性を確立し、課題解決をリードする中核人材 |
| レベル5 | 社内で価値創出を主導するハイエンド人材 |
| レベル6 | 市場でも認められる国内トップクラスのプロフェッショナル |
| レベル7 | 世界水準で市場をリードするトッププロフェッショナル |
次からはレベルごとの意味を具体的に解説します。
レベル1
レベル1は、IT人材としてのキャリアをスタートさせた入門者段階です。情報技術に関する基本的な知識をもち、上位者の指導のもとで、要求された作業を遂行することが求められます。
この段階では、ITの可能性を認識し、今後のキャリア形成に必要な基礎を築くことが重要になります。
レベル2
レベル2は、上位者の指導のもとで、業務上の要求事項を達成できる若手人材レベルです。基本的なITスキルを習得し、ITエンジニアとしての基礎が確立された段階といえます。
プロジェクトやチームのなかで、経験を積みながら自律的に行動できるスキルを養っていくことが期待される段階です。
レベル3
レベル3は、独立して業務を遂行できる中堅人材レベルです。応用的な知識とスキルをもち、自身に与えられた役割を責任もって果たせる段階と定義されます。後進の育成において、指導的な役割を担うことも期待されはじめます。
多くのITエンジニアにとって、プロフェッショナルとして自立するための最初の目標となるレベルです。
レベル4
レベル4は、特定の専門分野におけるスキルが確立したハイレベルなプレーヤーとしての立ち位置です。プロフェッショナルとして独力で業務上の課題を発見し、解決をリードする能力が求められます。
単に与えられたタスクをこなすだけでなく、自らの知見を活用してプロジェクトを牽引する役割を担います。
レベル5
レベル5は、ハイレベルな高度IT人材のなかでも、上位に該当する段階です。IPAの定義によれば、プロフェッショナルとして特定の専門分野を確立し、組織内において技術や方法論、さらにはビジネスそのものを創造してリードする能力が求められます。
組織内では、自他共に認める豊富な経験と実績を有する「ハイエンドプレーヤー」として扱われるのが特徴です。単に実務を遂行するだけでなく、専門的な知見をもとに組織の技術戦略を支える重責を担います。
レベル6
レベル6は、プロフェッショナルとして特定の専門分野が確立しており、組織の内外においてテクノロジーやメソドロジー、ビジネスを創造してリードする段階です。組織内にとどまらず、市場においても経験と実績を有したプロフェッショナルとして認められ、国内のハイエンドプレーヤーとして位置づけられます。
このレベルに到達した人材は、自らの専門性を活かして新たな価値を生みだすだけでなく、業界全体の動向を見据えた活動をおこなうことが期待されます。組織の枠を超えた影響力をもち、国内における技術革新やビジネスモデルの変革を牽引する存在といえます。
レベル7
ITSSにおける最高峰のレベル7は、国内のIT業界を代表するトップクラスの専門家として位置づけられます。その分野の第一人者であり、グローバル市場においても卓越した専門性と実績が認められる段階です。
このレベルに到達する人材は極めて少数ですが、世界で通用するプレーヤーとして組織の内外を牽引します。技術革新を通じて社会に新たな価値をもたらし、次世代の指針を示すことが期待される存在です。
軸2:IT業務の専門分野を定義する11の職種
実際のITサービスの種別を反映する形で、業務を11の専門分野に分類しています。これらの区分は「ものさし」として機能しやすくするため、各分野で必要なスキルを独立して参照できるように規定されているのが特徴です。
各区分は、単なる固定的な人材像のモデルではありません。市場で顧客が必要とするスキルをまず浮き彫りにし、その標準化をおこなうことで、変化の激しい市場に対して組織や個人が柔軟かつ大胆に対応できることを目指しています。具体的な11の職種は以下の通りです。
| 1 | マーケティング |
|---|---|
| 2 | セールス |
| 3 | コンサルタント |
| 4 | ITアーキテクト |
| 5 | プロジェクトマネジメント |
| 6 | ITスペシャリスト |
| 7 | アプリケーションスペシャリスト |
| 8 | ソフトウェアデベロップメント |
| 9 | カスタマーサービス |
| 10 | ITサービスマネジメント |
| 11 | エデュケーション |
マーケティング
マーケティングは、IT市場の動向や顧客ニーズを調査・分析し、事業戦略や販売戦略を立案する役割を担います。市場の将来性を見据え、自社の製品やサービスがどのような価値を提供できるかを明確にし、それを効果的に市場へ浸透させるための戦略を策定します。
具体的な業務には、市場調査、競合分析、製品企画、プロモーション活動などが含まれ、ビジネスの方向性を決定づける重要なポジションです。
セールス
セールスは、顧客が抱える課題やニーズに対して、自社のIT製品やサービスを活用したソリューションを提案し、契約に結びつける役割です。単に製品を販売するだけでなく、顧客のビジネスを深く理解し、最適な解決策を提示するコンサルティング能力が求められます。
訪問活動や提案書の作成、契約交渉など、顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、ビジネスの最前線で成果を創出します。
コンサルタント
コンサルタントは、顧客組織の経営課題をヒアリングし、ITを活用した解決策を策定・提言する専門家です。経営戦略や事業戦略のレベルから課題を分析し、情報システム化の構想策定や、業務プロセス改革の支援をおこないます。
高度な専門知識と論理的思考力、そして顧客のトップ層と対話できるコミュニケーション能力が不可欠です。IT投資の効果を最大化し、顧客のビジネス変革を支援する重要な役割を担います。
ITアーキテクト
ITアーキテクトは、ビジネス上の要求をもとに、システム全体の構造を設計する職種です。利用する技術の選定から、システムの機能、性能、セキュリティ要件までを考慮し、最適なシステム基盤を構築するための青写真を描きます。
ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなど、幅広い技術知識が求められるとともに、将来の拡張性や運用性も見据えた設計能力が必要です。プロジェクトの技術的な方針を決定する重要な役割を担います。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントは、システム開発や導入プロジェクトの責任者(PM)として、計画の立案から実行、終結までの一連のプロセスを管理します。具体的には、プロジェクトの目標設定、スケジュール管理、予算管理、品質管理、リスク管理など、多岐にわたる業務を担当します。
チームメンバーを統率し、ステークホルダーとの調整をおこないながら、プロジェクトを成功に導くリーダーシップが求められます。
ITスペシャリスト
ITスペシャリストは、特定の技術分野において、深い専門知識とスキルをもつ専門家です。ITSSでは、プラットフォーム、ネットワーク、データベース、アプリケーション共通基盤、システム管理、セキュリティの6つの専門分野が定義されています。
この職種は、システム基盤の設計・構築・導入から、稼働後の技術的な問題解決までを担当し、システムの安定稼働と性能維持に貢献します。
アプリケーションスペシャリスト
アプリケーションスペシャリストは、特定の業務領域に関する深い知識をもち、その分野のアプリケーションシステムの設計、開発、導入をおこなう専門家です。金融、製造、流通といった業界知識や、会計、人事といった業務知識に精通し、ユーザーの要求を正確にシステム要件に落とし込みます。
業務効率化や新たな価値創造に直接的に貢献するアプリケーションを構築するうえで、中心的な役割を果たします。
ソフトウェアデベロップメント
ソフトウェアデベロップメントは、ソフトウェア製品や関連部品の設計、開発、実装を担当します。
プログラミング言語や開発ツールを駆使し、要件定義や設計書にもとづいて、実際に機能するソフトウェアを構築する役割といえます。品質の高いコードを作成する技術力はもちろん、テストやデバッグ、バージョン管理といった開発プロセス全般に関する知識も求められます。
ITサービスや製品の根幹をなす機能を創りだす職種です。
カスタマーサービス
カスタマーサービスは、IT製品やサービスを利用する顧客からの問い合わせに対応し、問題解決を支援する役割をもちます。電話やメール、チャットなどを通じて技術的なサポートを提供したり、製品の操作方法を案内したりします。
ハードウェアやソフトウェアのトラブルシューティング、障害対応などが主な業務となります。顧客満足度を維持・向上させるための重要な窓口であり、高いコミュニケーション能力と技術的な知識の両方が必要とされます。
ITサービスマネジメント
ITサービスマネジメントは、システムが安定して稼働し続けるための運用・保守を担当します。システムの監視、障害発生時の復旧対応、定期的なメンテナンス、性能管理などが主な業務です。サービスの品質を維持・向上させるためのプロセス改善や、運用コストの最適化などもおこないます。
ビジネスを支えるITインフラの信頼性を確保する、縁の下の力持ちといえる重要な役割です。
エデュケーション
エデュケーションは、IT人材の育成を専門とする役割です。社内外のエンジニアやIT利用者に対して、必要な知識やスキルを習得させるための研修や教育プログラムを企画・実施します。カリキュラムの設計、教材の開発、講師としての登壇などが主な業務です。
IT業界全体の技術力向上や、組織内の人材育成に貢献する職種であり、専門知識と教育への情熱が求められます。
【レベル別】ITSSに対応する情報処理技術者試験の資格一覧

ITSSの各レベルは、IPAが実施する情報処理技術者試験の難易度の目安として関連付けられています。自身のスキルレベルを客観的に証明したり、キャリアアップの目標を設定したりする際、この資格一覧は有効な指標となります。
特定の資格を取得することは、対応するITSSレベルに到達していることの一つの目安とみなされます。
レベル1相当:ITパスポート試験
この試験は、ITエンジニアだけでなく、事務職や営業職など、ITを活用するすべての社会人を対象としています。
ITパスポートを取得することで、情報セキュリティやネットワーク、経営戦略といった幅広い分野の基本的な用語や考え方を理解していることの証明になります。
レベル2相当:基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は「ITエンジニアの登竜門」ともいわれ、プログラミングの基礎やアルゴリズム、システム設計、データベース、ネットワークといった、ITエンジニアとして働くうえで不可欠な基本的知識と技能が問われます。
この試験に合格することは、上位者の指導のもとで業務を遂行できるレベルにあることを示します。
レベル3相当:応用情報技術者試験
基本情報技術者試験で問われる基礎知識を応用し、独力でシステム開発の工程管理や技術選定、課題解決をおこなえる能力が試されます。
応用情報技術者試験の合格者は、IT技術者として一定の実務経験を積み、自律的に業務を遂行できるレベル3相当のスキルをもつと評価されます。
レベル4以上相当:その他高度情報処理技術者試験
専門分野ごとに細分化された複数の高度情報処理技術者試験が対応します。例えば、システムアーキテクト試験、ネットワークスペシャリスト試験、ITストラテジスト試験、情報処理安全確保支援士試験、システム監査技術者試験などが該当します。
これらは、それぞれの専門分野においてプロフェッショナルとしてチームの中核を担う高度な能力を有することを証明する国家試験です。特定のソリューションの提案や、複雑なタスクの設計・テストを主導できるレベルを示します。
また、他機関が認定する資格としては、公認情報セキュリティ監査人、CISSP、CISM、CISA、ISO/IEC 27001主任審査員などが、ITSSレベル4相当の力量を有する資格として位置づけられています。
【組織向け】ITSSの運用におけるポイント

組織においてITSSを活用することは、人材の能力を客観的な基準で評価し、戦略的な育成計画を立てるうえで非常に有効です。
スキルマップを使った運用
ITSSを活用する具体的な方法の一つが、スキルマップの作成と運用です。スキルマップとは、従業員一人ひとりがどの職種のどのレベルにあるかを一覧化したものです。
組織はこのマップを用いることで、個人の強みや育成課題を明確に把握し、客観的なデータにもとづいた人事評価や昇進・昇格の判断がおこなえるようになります。例えば、ある企業が新規事業をはじめる際、スキルマップを参照して適切なスキルをもつ人材を迅速にアサインすることが可能です。
また、全社的に不足しているスキルが分かれば、それに対応した研修を企画・実施できます。
研修ロードマップを活用した人材育成・戦略
組織が持続的な成長を遂げるためには、研修ロードマップの策定が欠かせません。
このロードマップは、各職種で定義されたレベルに到達するために必要な学習項目を体系化したものです。個々の従業員が自身の現在地と目標とするキャリアパスを照らしあわせることで、次に習得すべき専門スキルが明確になります。
組織側は、個人のスキルレベルに応じた適切な教育プログラムを段階的に提供できるため、教育投資の最適化につながります。また、形骸化しがちな人材育成を実効性のある戦略へと昇華させる効果もあります。
具体的に目指すべき姿が可視化されることで、従業員の学習意欲が高まり、組織全体の技術底上げを効率的におこなえるようになります。
SCS評価制度への対応
令和8年度末の開始が予定されているサプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)の評価スキームにおいて、ITSSレベル4相当の資格はセキュリティ専門家のスキル水準を表す例として示されています。
本制度の★3区分は取得希望組織が自ら評価を実施し、所定の要件を満たすセキュリティ専門家がその内容を確認します。制度上、専門家は社内外いずれの人材でもよいため、要件を満たす人物を組織内に配置できれば、評価プロセスを自社内で完結させることが可能です。
一方★4区分は、評価機関による第三者評価および技術検証の実施を求めるスキームです。★4におけるセキュリティ専門家は、評価機関側の責任者として配置され、評価に従事する者や成果物を監督し、評価の質と信頼性を担保する役割を担います。
このように、SCS評価制度においてセキュリティ専門家は、★3では自己評価の妥当性を担保する立場として、★4では第三者評価を統括する責任者として、それぞれ異なる役割を担います。
ITSSレベル4相当の高度資格は、こうした制度運用を支える専門人材の力量を示す指標のひとつとして位置づけられています。

(引用:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(案) P.20)
SCS評価制度の詳細については関連記事をご覧ください。
ITSSと他のスキル標準(UISS・ETSS・CCSF)との違い

ITSSはIT人材向けの代表的なスキル標準ですが、対象領域や目的が異なる他の指標も存在します。それぞれの特徴と違いを理解することで、自組織や自身の状況に最も適した指標を選択できます。
UISS(ユーザー情報システムスキル標準)との相違点
UISS(Users' InformationSystems Skill Standards:ユーザー情報システムスキル標準)は、ITサービスを提供するベンダーやSIerの人材を主な対象とするITSSとは異なり、ITを利活用する側の組織、いわゆるユーザー組織の情報システム部門の人材を対象としています。
そのため、UISSでは、組織の経営戦略にもとづくシステム企画、開発管理、運用・保守といった、ユーザー組織内での役割に応じたスキルが定義されています。
ITSSがサービス提供者の視点であるのに対し、UISSはサービス利用者の視点からスキルを体系化している点が大きな相違点です。
ETSS(組込みスキル標準)との相違点
ETSS(Embedded Technology Skill Standards:組込みスキル標準)は、自動車、家電、産業機器などに内蔵されるソフトウェア(組込みソフトウェア)の開発に携わる技術者を対象としたスキル標準です。
ITSSが対象とする業務システムやWebシステムとは異なり、ハードウェアと密接に関連する知識や、処理の即時性が求められるリアルタイム制御など、組込み開発に特有のスキルが定義されています。
対象とする技術ドメインが、ITSSの情報サービス分野とETSSの組込み分野で明確にわかれている点が大きな違いです。
CCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク)との関係性
CCSF(Common Career Skill Framework:共通キャリア・スキルフレームワーク)は、ITSS、UISS、ETSSといった個別に策定されたスキル標準を統合し、IT人材に関する指標全体を俯瞰できるように体系化した共通の枠組みです。
これにより、異なる分野のスキル標準間のレベル対応が明確になり、例えば組込み分野の技術者が情報サービス分野へキャリアチェンジするときのスキル評価などが容易になりました。
このフレームワークのなかで、ITSSは情報サービス領域における中核的なスキル標準として位置づけられています。
先端IT領域に対応した新指標「ITSS+(プラス)」とは?

ITSS+(プラス)は、第4次産業革命に向けて求められる新たな領域の"学び直し"の指針として策定されました。従来のITSSが既存のIT職種や専門分野を体系化してきたのに対し、ITSS+はAIやデータ活用、クラウドなどの先端分野に焦点を当てています。
近年は新技術の登場と普及が加速し、従来の職種定義だけでは整理しきれない役割やスキルが増えてきました。こうした背景を踏まえ、先端IT領域における人材像と必要スキルを明確化したものがITSS+です。
内容は市場動向に応じて継続的に見直されることが想定されており、先端分野でのキャリア形成における重要な指針となっています。
ITSS+の目的
ITSS+の主な目的は、従来のITSSでは十分にカバーできなかった先端IT領域について、人材育成の共通指標を示すことにあります。クラウドサービスの普及やビッグデータ活用の拡大、サイバーセキュリティ対策の高度化などを背景に、求められる専門性は大きく広がりました。
ITSS+では、こうした領域ごとの役割やスキルを整理・可視化することで、組織が育成計画を立てやすくし、個人が習得目標を明確にできる環境を整えています。
ITSS+で策定されている領域
ITSS+では、現代のIT環境において特に重要とされる複数の領域が策定されています。具体的には、「データサイエンス」「アジャイル」「IoTソリューション」「セキュリティ」という4つが挙げられており、それぞれで求められる役割やスキルが詳細に示されています。
データサイエンス領域
ITSS+のデータサイエンス領域では、組織内の膨大なデータを分析し、その結果を意思決定や価値創造に活用するための一連のタスクとスキルを体系化しています。
実務上の指針となる「タスクリスト」は、IPAとデータサイエンティスト協会の協業により策定されており、スキル評価には同協会が公開する「スキルチェックリスト」を活用する仕組みです。
2025年の改訂では、AI技術の急速な進化やAIエージェントの普及に合わせ「AI利活用タスクリスト」の内容が大幅に刷新されました。価値創造に向けたプロセスを、構想から運用、さらには適用・進化までの4フェーズで整理している点が特徴です。
アジャイル領域
2017年度、「第4次産業革命の実現に欠かせない手法でありながら本質的な理解が浸透していない」という課題に対処するため、アジャイル領域における指針づくりのためのワーキンググループが発足しました。その後、マインドセットや開発プロセスに加え、ビジネス側の役割や経営層の関与までを体系化し、組織全体のスキル変革を促す内容がまとめられています。
年度ごとの検討を経て、当初の開発者向けスキル定義から、事業を成功に導くためのビジネス主管側の振る舞いまで対象を広げてきました。近年はアジャイルソフトウェア開発宣言の読み解き方について、解釈の齟齬が起こりにくい表現へ改訂されています。
不確実な環境で価値を創出し続けるための能力を、具体的な役割や行動として示している点が特徴です。
IoTソリューション領域
IoTソリューション領域に関する指針では、主にITベンダーに求められる技術要素や開発プロセスに焦点を当て、IoTソリューション開発におけるロール(役割)と各ロールのタスク特性が整理されています。
名称が従来のITスキル標準と共通する部分もありますが、定義内容はIoT特有のタスクや開発手法に対応しています。
2018年公開時はコスト削減や省力化といった「守りのIT」を中心にスキルが定義されていました。その後の改訂では、ビジネス視点での技術活用やエッジコンピューティング設計・実装を重視するなど、「攻めのIT」への転換を踏まえた内容へ拡充されています。
「2021改訂版」では、スキル変革の指針およびタスクリストの見直しがおこなわれました。
セキュリティ領域
組織のセキュリティ対策に必要な業務を17分野に整理し、求められる知識やスキルの概要を体系化しています。これはセキュリティ体制の構築や人材の育成・配置における共通言語として活用でき、自組織の現状把握に役立ちます。
専門職であるセキュリティ人材だけでなく、デジタル部門や管理部門などの非専門家が「プラス・セキュリティ」人材として学び直す際の指針となる点も特徴です。経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」とあわせて検討されており、実務的な手引きと連携して活用することが推奨されます。
まとめ

ITSS(ITスキル標準)は、IT人材の能力を11の職種と7段階のレベルで体系化した共通指標です。組織にとっては客観的な人事評価や戦略的な人材育成の基準となり、個人にとっては自身の現在地把握やキャリアパス設計の道しるべとして機能します。
IPAが実施する情報処理技術者試験とも連動しており、資格取得がスキルレベルの証明に直結する点も特徴です。昨今はデータサイエンスなどの先端領域に対応したITSS+も策定されており、変化の速い業界ニーズに応じた育成を支援する枠組みとして活用されています。
本記事の内容を参考に、自組織に適した評価軸を導入し、人材育成の仕組みをより実効性の高いものへと発展させていきましょう。
IT資産管理ツールSS1/SS1クラウドを開発・販売している、株式会社ディー・オー・エスの営業企画部メンバーで構成されています。IT資産管理・ログ管理・情報セキュリティ対策など、情シス業務の効率化に役立つ最新トレンド情報を随時発信中!

セミナー情報
