セキュリティ関連の資格を取得しよう
ウイルスや不正アクセス、個人情報漏洩などのニュースが多く報じられるように、さまざまな企業でセキュリティが注目を集めています。
このため、業種や業界に関係なく、幅広く求められているのがセキュリティに関する知識です。そして、その知識を持っていることの証明として資格を取得しておくことは有効です。
どのような資格があるのか、取得するとどんなメリットがあるのか、取得するにはどんな勉強方法があるのかを紹介します。
セキュリティ関連の資格とは?
セキュリティという言葉が指す範囲は広く、情報セキュリティの基本的な考え方、情報資産の保護、ネットワークセキュリティ、暗号化技術、法令遵守など、幅広い分野が関係しています。
そして、その幅広い分野がある中で、セキュリティに関する資格は「対策を立てて実施する側」と「正しく対策が実施できているかを確認する側」に分かれています。
これは「セキュリティを中心にしたもの」と「監査を中心にしたもの」だと言い換えることもできます。そして、それぞれに国家資格や民間資格、ベンダー資格などがあります。
具体的には、次のような資格試験があります。
セキュリティ | 監査 | |
---|---|---|
国家資格 | 情報処理安全確保支援士 情報セキュリティマネジメント | システム監査技術者 |
民間資格 | CISSP (公認情報システムセキュリティ専門家) CISM(公認情報セキュリティマネジャー) 個人情報保護士 情報セキュリティ管理士 CompTIA GIAC(Global Information Assurance Certification) | CISA (公認情報システム監査人) CIA(公認内部監査人) CFE(公認不正検査士) ISMS審査員 |
その他、AWSやMicrosoft、Ciscoなどさまざまなベンダーが独自に自社の製品やサービスについての知識を証明する資格を実施しています。
資格を取得するメリット
セキュリティ関連の資格を取得するメリットとして、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
1. 知識やスキルを体系的に習得できる
資格試験では、一般にその分野についての幅広い知識が問われます。これはセキュリティの資格でも同じで、実務で使う限られた範囲の知識だけでなく、業界全体として知っておくべき知識を体系的に学習できるため、効率的に知識を習得できます。
また、最新の脅威や対策についても取り上げられることがあり、身につけた情報セキュリティについての知識を更新することにもつながります。
2. キャリアアップに有利になる
資格を取得すると、企業においては昇進や昇格などの参考にされるだけでなく、資格手当や合格一時金などが支給されることもあります。社内での評価が高まるだけでなく、名刺などに資格の名前を記載することで相手から信頼され、新たな仕事を受注するときの差別化につながることもあります。
また、転職するときにも、セキュリティについての幅広い知識を持っていることの証明となり、有利に働く可能性があります。
3. 意識を高められる
セキュリティ関連の資格の中には、資格取得者に義務が定められている場合があります。
たとえば、情報処理安全確保支援士では資格試験に合格後、登録することで「登録セキュリティスペシャリスト(登録セキスペ)」になります。
この登録セキスペには、「登録セキスペとしての義務」として「信用失墜行為の禁止」や「秘密保持」などが定められています。
このように、資格を取得することで、情報セキュリティに関する意識が高まり、普段の業務の中でも個人情報や組織の資産を適切に保護するための意識が変化することがあります。
必要な資格の選び方
上記で解説したように、セキュリティ関連の資格は種類が豊富であり、内容や難易度がそれぞれ異なります。
受験するには費用もかかりますし、合格後にその資格を維持するために研修を受講する必要があるなど、追加で費用がかかることもあります。
このため、手当たり次第に受験するのではなく、自分の業務に必要か、将来的に役立つか、などを考慮して選ばなければなりません。
1.興味のある分野で選ぶ
技術者として専門性を高めたいのか、マネジメント層を目指すのか、社外に向けたコンサルティングなどをしたいのかなどによって、必要な資格は異なります。
当然、情報セキュリティの分野の中で、何に興味を持っているのかによっても変わります。
興味のある分野の資格を選ぶことで、より効果的に学習を進められます。
2.身につけたい知識の種類で選ぶ
国家資格と民間資格、ベンダー資格では難易度や求められる知識の幅が異なります。
特定の製品やサービスに詳しくなりたいのであればベンダー資格が有効ですし、幅広く長く使えるセキュリティに関する知識を身に付けたいのであれば国家資格に挑戦するのがよいでしょう。
3.知名度や将来性で選ぶ
資格を選ぶときには、その知名度や将来性に着目することも有効です。せっかく資格を取得しても、誰も知らない資格であればその価値はあまり認められません。
また、資格に有効期限がある場合には、その資格を取得するタイミングも考慮に入れる必要があるかもしれません。
資格の取得には、時間と費用がかかるため、資格を取得することでどのような効果が得られるのか、そして自分が持つスキルや将来性を照らし合わせて、適切な資格を選びましょう。
資格を取得するための勉強方法
普段の業務で得られる知識だけで資格を取得できればよいのですが、多くの場合、合格するためには試験対策が必要です。
実務だけでは得られない知識を得るための工夫について紹介します。
1.書籍を活用する
資格を取得するとき、多くの人が使うのは書籍を活用して学ぶ方法です。
書店には資格のコーナーが用意されており、さまざまな資格についての参考書や過去問についての本が並んでいます。この中から、受験する資格についてまずは1冊を読み込み、練習問題や過去問を解く方法があります。
これに加えて、資格とは関係なくセキュリティに関する書籍を読む方法も有効です。最新の内容を学ぶためには、過去問を解くだけでなく、専門書を読んだり、インターネットを活用したりして情報を収集することが求められるためです。
一般的には、書籍を読み、ある程度の情報収集ができれば合格できるような試験が多いでしょう。時間や場所に縛られずに学習できるというメリットもあり、セキュリティに関する資格だけでなく幅広く使える手法です。
2.通信教育や学校の講座を活用する
初心者の場合は、モチベーションを保つのが難しい、わからないところがあると質問できない、という問題があります。難易度が高く理解できない内容があると、そこで学習が止まってしまうのです。
このため、質問できる環境を用意する方法もあります。たとえば、通信教育や学校が用意している講座を受講する方法が挙げられます。
ある程度の費用はかかりますが、プロの講師から指導を受けられるだけでなく、質問や疑問に答えてもらえるのは助かる人が多いでしょう。
最近では、オンラインでの学習サービスも登場しています。動画で配信されている講義を受講したり、模擬試験を受けたりするなど、便利な仕組みが用意されています。
また、オンラインのコミュニティに参加する方法も有効です。勉強仲間を見つけて、モチベーションを維持することができれば、効率よく勉強できるかもしれません。
3.セキュリティ競技に参加する
実践的な学習として、セキュリティの場合は、CTF(Capture The Flag)といったセキュリティ競技に参加する方法もあります。
さまざまな企業が定期的にイベントとして開催しており、用意された問題に取り組むことで、攻撃側の視点で体験することで覚えた知識への理解が深まります。
まとめ
資格試験によって難易度は大きく異なりますし、その知名度も大きく異なります。受験者数の推移や合格率の推移、世の中でのニュースなどトレンドを把握しながら、どの資格を選ぶのかを考えてみましょう。
資格は持っているだけでは意味がありませんので、その資格を取得したあとにどのように業務に活かすのかを含めて検討するようにしましょう。
増井 敏克氏(ますい としかつ)
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)、情報処理技術者試験にも多数合格。
ビジネス数学検定1級。
「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピューターを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や各種ソフトウェア開発、データ分析などをおこなっている。
著書に『図解まるわかり セキュリティのしくみ』『図解まるわかり プログラミングのしくみ』『図解まるわかり アルゴリズムのしくみ』『IT用語図鑑』『IT用語図鑑[エンジニア編]』『Pythonではじめるアルゴリズム入門』『プログラマ脳を鍛える数学パズル』『プログラマを育てる脳トレパズル』(以上、翔泳社)、『プログラマのためのディープラーニングのしくみがわかる数学入門』『プログラミング言語図鑑』(以上、ソシム)、『基礎からのプログラミングリテラシー』(技術評論社)、『RとPythonで学ぶ統計学入門』(オーム社)などがある。